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トレーラーハウスと災害支援の重要性

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ワーケーションとデザイン

2024.12.02 ライター:土屋真

トレーラーハウスと災害支援の重要性
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トレーラーハウスの背景

近年、トレーラーハウスが災害支援の場面で注目を集めています。特に2011年の東日本大震災以降、その存在感が一層増してきた印象があります。この震災を契機に、迅速かつ柔軟な対応が可能となるトレーラーハウスの有用性が再評価されました。日本におけるトレーラーハウスの活用は、アメリカにおける事例を参考にしつつ、国内法に合わせて独自に進化したものです。

トレーラーハウスは、元々アメリカで普及したものであり、災害時には仮設住宅として広く利用されてきました。アメリカでは、特にハリケーンなどの自然災害が頻発する地域において、トレーラーハウスは迅速な住居支援の手段として定着しています。このような背景から、日本でもトレーラーハウスの導入が進み、災害支援における重要な選択肢の一つとなりつつあります。

可動性と設置性の利点

トレーラーハウスが災害時に有効である理由は、何と言ってもその可動性にあります。災害発生後、被災地に迅速に移動し、設置することが可能です。しかし、インフラとの接続が必要なため、通常の建築工事と同様に手間がかかることもあります。特に、電気や水道、下水道といったインフラを整備するには、専門の業者が必要となり、これがスムーズに行えなければ仮設住宅の完成が遅れることもあります。

仮設住宅は使用後、ほとんどが廃棄されてしまいます。これは、仮設住宅が特定の場所に固定され、あくまで仮設的仕様で作られており他の用途に転用することが難しいためです。一方、トレーラーハウスは一般の2×4住宅と同程度の性能を有します。またトレーラーハウスの場合はリユースが容易なので、一度インフラ接続を解けば、別の場所に移動して再利用することができます。たとえば、ある地域で災害が発生した際に移動したトレーラーハウスを、復興が進んだ後には別の場所で地域振興やイベントスペースとして活用することが可能です。このように、トレーラーハウスは廃棄物を削減する手段としても優れています。復興に合わせて柔軟に使い方を変えていくことが可能となります。そのためには、平常時と災害時を別々に考えるのではなく、両者を一律のものとして考えた運用方法が重要となります。例えば、普段はキャンプ場の宿泊施設として利用されているトレーラーハウスを、災害時は被災地へリースし、仮設住宅として利用するといった運用法です。実際にこのような運用がなされた事例が過去に日本でありました。

日本のトレーラーハウス産業の現状

アメリカと比べると、日本のトレーラーハウス産業はまだ発展途上です。近年では需要の高まりとともにトレーラーハウスの生産力も増してきていると思います。今後、トレーラーハウス産業が本格的に立ち上がることで、災害に強い地域づくりが進むことが期待されます。トレーラーハウスは、単なる移動可能な住居にとどまらず、地域の活性化や災害時の迅速な対応を可能にする重要なツールです。これからもその可能性を追求し、持続可能な社会の実現に貢献していくことが求められています。

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コラムを担当したデザイナーについて

土屋 真の写真

土屋 真Tsuchiya Shin

デザイナーの⼟屋真は、一級建築士として建築デザインを行ってきました。現在では移動する空間のデザインを専門としています。

土屋は研究者としての側面も持っており、トレーラーハウスの利用についての研究で博⼠号を取得しています。

国内の設置事例に関する数々のフィールドワークや製造現場の調査などを⾏っています。

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